他化自在天と 怨霊になる方法(4)
いまの人間たちには、こういう事情があるということが分かりづらいかも知れませんねえ。
むかしの人間は、毎日毎日神仏に向かってあれやこれや、願ってましたからねえ。
それを生涯やっていたわけですよ。
いまはそういう人間もいませんしねえ、怨霊はそんな簡単になれるもんじゃあありません。
御霊(ごりょう)
怨霊(おんりょう)
夜叉(やしゃ)
悪霊(あくりょう)
そして 鬼(おに)
という序列がありまして、それぞれに担当は決まっております。
さきほどもお話しましたが、人間のみなさんが怨霊だと呼んでいるもののほとんどは「鬼」ですね。
人間からちょっと落ちれば、鬼になれますから。
あるいは、なにか自分の欲求のために特殊な力を得たいと思えば、人間はかんたんに鬼のようになれるわけですよ。
ほら、なんだかザワザワしてきたでしょう。胸のあたりとか、頭のあたりとか、首のあたりとか。
そういうところから、いろんなものが入ってくるわけです。
それを「憑きもの」といいますね。
やれ、あの人が憎いだの、あいつなんぞ失脚してしまえだのと思っていると、そういう憑きものたちがわんさと寄ってくるもので、なかには自分から加持祈祷をして呼び寄せたりする人間もいるわけですよ。
僧侶に高額な布施をしたりして。
でもって、ああでもない、こうでもないと身のほどを忘れてのめり込んでいくうちに、気がつくとはや、畜生道の仲間入りをしているわけです。
ほとんどのものは、このあたりではじめの目的も忘れてしまい、みずからの死が迫っている、という状況になっています。
自分がなにをやってたんだか、わからなくなるんでしょうねえ。
そうなると、鬼の仲間入りです。
(次回へつづく)
2023.6.6記