ヒトはいかにしてカミになるのか(5)

ヒトはいかにして悪魔になるのか

メフィストフェレスが語る

「たましいを売る」とは(2)

 

たとえば金銭、金額や地位や名誉というものは、その間接物、媒介物でしかない。

ただ、その「あなたは、なにに対して心を捧げているのか」はサービスであったり、ものの味だったり、作品の品格としてあらわれる。

 

―意外だったでしょう?

悪魔の世界というのは、まことにスピリチュアルな現象によって成り立っているのですよ。

その点では「神なき世界」ではない。

「神の如きものが、支配する、成り立つ世界」であるのです。

このあたりから、核心に入っていきます。

たとえば作家が、あるいは料理人が、自分の能力をぞんぶんに発揮して、作品をつくりあげたいと願ったとします。

彼らは、実によく、そういう願い、心願を抱きます。

その時すでに、悪魔の下僕となっているのです。

そこにはたらいているのは、みずからが全支配、全コントロールしたものをつくりたい、という欲求です。

すべてをプロデュースしたい、という意識でもいい。

そのおそろしさに、彼らは気がついていない。

はたしてそこに、ほかのもの、たとえば天祐なり、神なり、天使なりが訪れる隙はあるでしょうか。

(次回につづく)

2023.7.21記