セオリツヒメが語る
日本の精神文化としての 御霊 怨霊 夜叉 悪霊
そして鬼(二)
現在、わたくしどもは、これまでの戦争で海外に眠っておられた戦没者の方々の御霊(みたま)の引き揚げを行っております。
長いあいだ、ふるさとを遠く離れた土地におられた方々に、すこしでも美しいふるさとの景色を、すがたを見せてあげたい。
そのために、多少の普請をしております。その方たちに、最後にせめてもの贈りものをして差し上げたいのです。
なつかしいふるさとの雨ならば、決して冷たくはないでしょう。帰りをあたたかく迎え入れる、里宮が待っているでしょう。
変わり果てたふるさとを、その方たちに見せたくはないのです。かれらのまぶたの裏にあったそのふるさとに、すこしでも近づけてあげたいのです。
それは人も同じです。すっかり変わってしまった日本人のなかには、かれらを戻すことはできません。
なぜなら、彼らを苦しめた相手のなかに、ふたたび送り込むようなことはできないからです。
それが「日本」というところです。
(次回につづく)
2023.6.6(火)記