ヒトはいかにして悪魔になるのか
メフィストフェレスが語る
「たましいを売る」とは(2)
たとえば金銭、金額や地位や名誉というものは、その間接物、媒介物でしかない。
ただ、その「あなたは、なにに対して心を捧げているのか」はサービスであったり、ものの味だったり、作品の品格としてあらわれる。
―意外だったでしょう?
悪魔の世界というのは、まことにスピリチュアルな現象によって成り立っているのですよ。
その点では「神なき世界」ではない。
「神の如きものが、支配する、成り立つ世界」であるのです。
このあたりから、核心に入っていきます。
たとえば作家が、あるいは料理人が、自分の能力をぞんぶんに発揮して、作品をつくりあげたいと願ったとします。
彼らは、実によく、そういう願い、心願を抱きます。
その時すでに、悪魔の下僕となっているのです。
そこにはたらいているのは、みずからが全支配、全コントロールしたものをつくりたい、という欲求です。
すべてをプロデュースしたい、という意識でもいい。
そのおそろしさに、彼らは気がついていない。
はたしてそこに、ほかのもの、たとえば天祐なり、神なり、天使なりが訪れる隙はあるでしょうか。
(次回につづく)
2023.7.21記